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すごい反響だった。
街に貼られた菜緒のポスターは貼ったその場から剥がされていった。
取材はもちろんドラマの話、映画の話が次々と舞い込んだ。
そんなとき、遠山さんから電話があった。
菜緒と佐島さんの写真集を出さないかという提案だった。
佐島さんが撮った菜緒の写真と菜緒が撮ったウブドの写真のコラボレーション。
そして、校正刷りが上がって来た頃、事件は起きた。
“藤本菜緒、妻を自殺に追いやったカメラマンとの禁断の恋”
菜緒がガゼボに寝そべってそばに座っている佐島さんの手を握っている。
ゴシップ誌アウトフォーカスの記者から、この記事を止めたいなら5000万を支払えと言って来た。
麻起子さんと緊急会議。
「事実なの?」
「いえ・・・ただ、佐島さんは菜緒の父親に似ているんです。だから佐島さんに恋心を抱いたのは事実ですが、あの二人にやましいことは絶対にありません。」
「この写真はどうみても手を繋いでいるわよね・・・」
「はい・・・僕もそばにいましたから・・・」
「そうなの?!」
「ただ、彼等は僕がそばにいたことを知りません。」
「でも・・・どうして?・・・誰かが二人の関係を怪しいと思ったのよね・・・それは誰?」
「たぶん、怪しいと思ったんじゃないと思います・・・」
「どういうこと?」
・・・ここまで執拗な男・・・あいつしかいない・・・
「心当たりがあるんです。彼は、また佐島さんに同じことをしようとしている・・・佐島さんをまた陥れようとしている。」
「彼って・・・誰のこと? 狙われたのは菜緒じゃなくて・・・佐島さん?」
「麻起子さんは知らない方がいい。とにかく、この記事は無視しましょう。そして菜緒には自然体でいるように言いましょう。菜緒は、賢い子ですから大丈夫、心配いりません。・・・だから・・・この件は僕に任せて」