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ジェウォンから手紙が届いた。

彼は、菜緒のマネージャーを辞めて韓国に帰るらしい。

一流大学の工学部を主席で卒業した彼の経歴からすると大企業も放っておいてくれなかったのだろう。
 
そして封書の中に新聞記事の小さな切り抜きが入っていた。

 

“日本で著名な広告カメラマン大沼安彦氏が右目を失明”
 

大沼は、仕事でニュージーランドのクライストチャーチのホテルに滞在していた。
記事によるとカメラのファインダーを覗いていてシャッターを切った瞬間に、そのファインダーが破裂したというのだ。

カメラは、ゼンザブロニカD・・・大沼が昔からほしがっていたカメラだ。
ハッセルブラッドよりむしろ良い機能が付いている。
初期型はニッコール装着で特にそれをほしがっていた。

ネットオークションで手に入れたということらしい。
そして出品者は不明・・・警察は事件と事故の両面で捜査している・・・もし事件だとすると・・・誰かがシャッターを押すとファインダーが破裂するという手の込んだ仕掛けを作ったということだ。

特殊な技術・・・特殊な知識・・・
 

それが誰なのか・・・考えたくもなかった。

右目が失明したということは、もうカメラマンとしての生命も終わりということになる。

魂を抜かれた男と失明した男・・・少なくともオレは、由季への愛を証明するために写真を撮り続けることができる。
 

オレは・・・幸せなのだ。

由季のおかげで人間らしさを取り戻せているのだから。