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私に何も言わずにジェウォンがいなくなった。

なぜだか私の心にぽっかりと穴が開いた。

 

窓辺の花が枯れている

冷蔵庫のトマトジュースがきれている

そして・・・今日も朝寝坊しちゃった

 

いなくなってわかるジェウォンの細かい気配り

 

そこへ新しい付き人のミナから電話が入った
 

「菜緒さん・・・今日は、1時から雑誌の取材が3本入ってます。その後夕方4時からレコーディング・・・なので、10時にサロンドユキのユキ先生を抑えておきました。9時にはお迎えに上がりますね。・・・それとトマトジュース足りてますか? ん?その感じじゃ今起きたばかりですね?・・・明日から必ずモーニングコールするようにします。あ、そうだ・・・窓辺のお花、お水上げてますか?・・・」
 

きっとジェウォンだ・・・いなくなったけど、今でもそばにいる。

 

急にいなくなったジェウォンにとまどって・・・そしてすねていたけど・・・会いたい・・・無性に声が聞きたくなって電話した

 

「お兄ちゃん? 元気?」
 

「菜緒?どうした?・・・なにかあったのか?」
 

「何もないよ・・・お兄ちゃんはいつも私の心配ばかり・・・そうか、今まで私が心配ばかりかけていたのか」
 

「どうした?今日の菜緒はいつもの菜緒らしくないぞ? そうだ、ミナはどうだ? いい子だろ?」
 

「うん、とてもよく気がつくわ・・・ところで、仕事はうまくいってるの?」
 

「そうだな、まだまだ新入社員だから・・・でも、得意な分野だからやりがいがある・・・」
 

「そうね・・・お兄ちゃん、頭いいもんね・・・ね、ときどき電話くれる?」
 

「あぁ・・・菜緒もつらいことがあったらいつでも電話してこいよ・・・おれは、今でも菜緒のお兄ちゃんだから」