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菜緒、今度のクリスマスは休みが取れるわよ・・・ここのところ忙しくってプライベートな時間がなかったからね。」
 

麻起子さんからのプレゼントだ。
 

「じゃぁ・・・どこかにぶらりと一人旅・・・なんて。」
 

「いいよ・・・でも3日しかないからね。そのあとはびっしり仕事よ。」
 

「わかってる・・・3日もあれば十分。」

 

そうして私は今ソウルにいる。

 

久しぶりのジェウォンは自信に満ちて凛としていた。

優しいお兄ちゃんと思っていたジェウオンがこんなにかっこよかったなんて・・・今更ながらに見直した。

 

「どう、調子は?」
 

「会社は辞めようと思っているんだ・・・」
 

「えっ・・・なにかあったの?まだ2年しか経っていないのに・・・」
 

「大学時代の友達とIT関係の会社を立ち上げようと思ってさ・・・菜緒のお父さんみたいに。」
 

「すごい!お兄ちゃんならきっと成功するよ!」
 

菜緒・・・成功したらお前を迎えにきてもいいか?・・・」
 

「えっ?迎えにくるって?・・・私を? 」
 

「成功したらって話さ・・・でも、がんばる・・・その日が来るまでしっかりオレのこと見ていてくれないか」
 

「それって・・・つまり・・・」
 

ジェウォンは、私にとってお兄ちゃんだと思っていた・・・もちろん大事なお兄ちゃん

何でも話せて・・・それでいて私のこと一番良くわかってくれている。

そしてこの2年間ずっと離れていたのに、いつもそばにいた・・・心地よい関係が当たり前だと思っていたけど・・・私・・・ジェウオンがいない生活なんか考えられない

 

ドキドキしていた・・・これってときめき?

 

ジェウォンは私のマフラーを巻き直しながら言った。
 

「バカだな、まだ先の話だ・・・今あわてて返事をしなくていいんだ。オレが菜緒にとってのスンホさんにきっとなってみせる・・・」
 

「うううん、パパになる必要なんてない・・・お兄ちゃんは、お兄ちゃんらしくいて・・・」
 

私の方こそ、もうそろそろパパ離れしなくちゃいけないのよね・・・

 

なんだかうれしくて涙がこぼれて来た。

ママもパパからプロポーズを受けたときにこんな気持ちだったに違いない。

 

アンドレ・ギャニオンの曲は、“めぐり逢い”に始まり、“思い出を重ねて”“とまどい”“ひたむきな愛”“かすかな予感”・・・そして最後は“愛に包まれて”で終わる。

これが私の人生。

 

「菜緒、クリスマスイブはオレが菜緒にプロポーズをした日だ・・・そのことをずっと覚えていてくれ・・・そして、またいつかクリスマスイブに必ずお前を迎えにくる・・・」

 

パパとママが死んだクリスマスイブにプロポーズをうけるなんて・・・私にとって悲しい日を愛の日に変えたかったのね・・・なんてやさしいジェウォン・・・

 

「お兄ちゃん・・・私、待ってる・・・待ってるからね。」

 

あたりを見回すと、クリスマスソングが鳴り響く街を・・・ケーキをもった人々が家路を急いでいる・・・プレゼントを片手に父親の背中で子供が寝息をたてている・・・寒そうにしている女の子の首に母親が自分のマフラーをはずして巻いてあげている・・・カップルが手を繋いで幸せそうに寄り添っている・・・久しぶりのクリスマスの風景・・・こんなに愛に包まれた日だったのね
 

私は、ジェウォンの手を取った・・・父のように温かく・・・やさしさに溢れていた。